慢性疲労症候群(CFS)や長期COVIDの診断・管理においては、適切な医療検査が重要な役割を果たします。しかし、どのような検査を受けるべきか、結果をどう解釈すべきかについての情報は限られています。この記事では、日本で受けられる主要な検査と、その結果の解釈についてご紹介します。

検査の目的を理解する

CFSや長期COVIDの検査には、主に以下の3つの目的があります:

  1. 除外診断 - 他の疾患(甲状腺機能低下症など)を除外する
  2. 合併症の特定 - 関連する健康問題(貧血、ビタミン欠乏症など)を特定する
  3. 生物学的マーカーの評価 - 炎症、免疫機能、エネルギー代謝などの状態を評価する

重要なのは、CFSや長期COVIDを直接確定診断できる単一の検査は現時点で存在しないということです。複数の検査結果と臨床症状を総合的に評価することが必要です。

基本的な検査項目

1. 血液一般検査(CBC)

主な評価項目:

  • 白血球数とその分画(免疫機能の指標)
  • 赤血球数、ヘモグロビン、ヘマトクリット(貧血の評価)
  • 血小板数

CFSと長期COVIDにおける特徴的な所見:

  • 軽度のリンパ球減少症
  • 軽度の貧血(慢性疾患に伴う貧血)
  • NK細胞活性の低下(専門施設での検査が必要)

2. 生化学検査

主な評価項目:

  • 肝機能検査(AST、ALT、ALP、γ-GTP)
  • 腎機能検査(BUN、Cr、eGFR)
  • 電解質(Na、K、Cl)
  • 血糖値、HbA1c
  • 脂質プロファイル(総コレステロール、LDL、HDL、中性脂肪)

CFSと長期COVIDにおける特徴的な所見:

  • 多くの場合、標準的な生化学検査は正常範囲内
  • 一部の患者で軽度の肝酵素上昇

3. 甲状腺機能検査

主な評価項目:

  • TSH(甲状腺刺激ホルモン)
  • FT4(遊離サイロキシン)
  • 抗TPO抗体、抗サイログロブリン抗体(自己免疫性甲状腺疾患の評価)

重要性: 甲状腺機能低下症はCFSと類似した症状を引き起こすため、必ず除外する必要があります。亜臨床的甲状腺機能低下症(TSHの軽度上昇とFT4正常)も疲労感の原因となりうるため注意が必要です。

4. 炎症マーカー

主な評価項目:

  • CRP(C反応性タンパク)
  • 赤血球沈降速度(ESR)
  • フェリチン(鉄貯蔵タンパク質であるとともに急性期タンパク質)

CFSと長期COVIDにおける特徴的な所見:

  • CRPは多くの場合正常範囲内か軽度上昇
  • 長期COVIDでは炎症マーカーの上昇がより一般的
  • フェリチン高値は慢性炎症を示唆

5. ウイルス学的検査

主な評価項目:

  • EBV(Epstein-Barr virus、エプスタイン・バーウイルス)抗体価
  • CMV(Cytomegalovirus、サイトメガロウイルス)抗体価
  • HHV-6(Human Herpesvirus 6、ヒトヘルペスウイルス6型)抗体価

CFSと長期COVIDにおける特徴的な所見:

  • EBVの再活性化を示す抗体パターン(EA-IgG、VCA-IgG高値など)
  • 一部の患者でHHV-6の再活性化所見

専門的な検査項目

以下の検査は、一般的な医療機関ではなく、CFS・長期COVID専門クリニックや研究機関で実施されることが多いものです。

1. 免疫系の詳細評価

主な評価項目:

  • サイトカインプロファイル(IL-6、TNF-α、IL-1βなど)
  • T細胞サブセット分析
  • 自己抗体スクリーニング(抗核抗体、抗リン脂質抗体など)

CFSと長期COVIDにおける特徴的な所見:

  • 炎症性サイトカインの上昇パターン
  • 制御性T細胞(Treg)の機能異常
  • 自己抗体の存在(特に長期COVIDで報告)

2. 自律神経機能検査

主な評価項目:

  • 起立試験(仰臥位→立位での心拍数・血圧変化)
  • 心拍変動解析(HRV: Heart Rate Variability)
  • 発汗機能検査
  • 瞳孔反応試験

CFSと長期COVIDにおける特徴的な所見:

  • 起立性頻脈症候群(POTS)
  • 交感神経系の過活動と副交感神経系の機能低下
  • 起立不耐性

3. 代謝・ミトコンドリア機能検査

主な評価項目:

  • ATP産生能
  • 乳酸/ピルビン酸比
  • カルニチンプロファイル
  • 有機酸分析

CFSと長期COVIDにおける特徴的な所見:

  • ATP産生の低下
  • 乳酸上昇(特に運動後)
  • カルニチン欠乏
  • 特定の有機酸パターンの変化

4. 脳・神経系の評価

主な評価項目:

  • 脳MRI(構造的変化の評価)
  • 脳SPECT(血流評価)
  • 認知機能検査
  • 脳脊髄液検査(研究的状況下)

CFSと長期COVIDにおける特徴的な所見:

  • 白質病変(一部の患者)
  • 脳幹および視床下部領域の血流低下
  • 認知処理速度の低下、実行機能障害
  • 脳脊髄液中の炎症マーカー上昇

栄養・ビタミン状態の評価

主な評価項目:

  • ビタミンD
  • ビタミンB12
  • 葉酸
  • 鉄状態(フェリチン、TIBC、鉄)
  • 亜鉛、マグネシウムなどのミネラル

CFSと長期COVIDにおける特徴的な所見:

  • ビタミンD欠乏
  • B12低値または機能的B12欠乏
  • フェリチン異常(低値または高値)
  • マグネシウム欠乏

日本の医療機関で検査を受ける際のアドバイス

保険診療内での検査

日本の健康保険制度内で受けられる基本的な検査には以下のものがあります:

  • 血液一般検査
  • 生化学検査
  • 甲状腺機能検査
  • 基本的な炎症マーカー(CRP、赤沈)
  • 基本的なウイルス抗体検査

これらは総合病院や一般内科で実施可能です。検査を依頼する際は、CFS/長期COVIDを疑っている旨を医師に伝え、関連する検査をお願いすることが大切です。

自費診療での検査

より専門的な検査は自費診療となることが多いです:

  • 詳細な免疫学的検査
  • 自律神経機能検査の一部
  • 特殊なウイルス検査
  • 詳細な栄養評価

これらの検査は、CFS/長期COVID専門クリニックや統合医療クリニックで受けられることがあります。

検査結果の解釈と管理

  • 検査結果のコピーを保管する - 自分の検査結果のコピーを常に取得し、保管しておきましょう
  • 経時的変化に注目する - 単回の検査結果だけでなく、時間経過による変化も重要です
  • 「正常範囲内」の意味を理解する - 検査値が正常範囲内でも、個人の最適値からずれていることはあります
  • 統合的な視点で考える - 個々の検査結果ではなく、全体のパターンを見ることが重要です

検査結果に基づく対応策

検査結果に基づいて、以下のような対応を検討することができます:

  1. 特定の栄養素欠乏の補正

    • ビタミンD欠乏 → サプリメントまたは日光浴
    • B12/葉酸欠乏 → 適切なサプリメント
    • 鉄欠乏 → 鉄補充療法(医師の監督の下で)
  2. 炎症の管理

    • 抗炎症食への移行
    • ストレス管理技術の実践
    • 適切な休息とペーシング
  3. 自律神経機能障害への対応

    • 塩分摂取の調整(POTSの場合)
    • 段階的な直立訓練
    • 圧迫ストッキングの使用
  4. ウイルス再活性化への対応

    • 抗ウイルス療法(医師の監督の下で)
    • 免疫サポート戦略

まとめ

CFSや長期COVIDの診断と管理においては、適切な医療検査が重要な役割を果たします。検査はこれらの状態を直接確定診断するというよりも、他の疾患の除外、合併症の特定、治療計画の立案に役立ちます。

どの検査が自分に適しているかについては、CFS/長期COVID専門医や統合医療専門医と相談することをお勧めします。すべての検査が全員に必要なわけではなく、症状や臨床経過に基づいて個別化されるべきです。

そして最も重要なのは、検査結果だけに頼るのではなく、症状、生活の質、機能的能力など、患者自身の体験も診断と治療計画において同様に価値あるデータであるということです。

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